クラブの厚みとは
六甲クラブはクラブ内に2チームを持つ。
兵庫県クラブAリーグに所属する「六甲レッドウイングス(RW)」には多くの世代の選手が集まってくる。
高校を卒業したての若手から50代のベテラン選手まで。それぞれの思いは違えど、「勝利」を真剣に追い求め懸命のプレーをする。
台風18号の影響が心配された加古川・日岡山GでのRW開幕戦の相手は歩々ラガーズ。固く、重いFW陣が特徴の兵庫県内最強チーム。既にリーグ戦2連勝で調子を上げている。一方の六甲RWは日曜出勤、運動会などでギリギリのメンバー構成で臨んだ。
開始わずか1分。先制したのは歩々ラガーズだった。不用意なノックオンから歩々ラガーズにターンオーバーを簡単に許し、ゴール前のキック処理ももたつき、SOに入った谷のインゴールからのタッチキックを鋭くチャージされ、そのままま抑え込まれて先制トライを許してしまった。
直後のキックオフで20歳になったばかりのLO上野が二人がかりのタックルを受けながらゴールに飛び込んだが、受けに回った情勢はなかなか挽回できじゃい。
「アップ前から雰囲気がユルく、全体の気持ちを上げきれなかった」(SO谷)
確かに「切り替えが大事」といいながら、アップのグリッドで何度かボールをこぼれた場面があった。
もちろん、歩々ラガーズの執念も凄まじかった。当たりの激しいLO・3列が勢いよく攻め込んでくる。BK陣も低いタックルで対抗して、六甲の前進を許さない。特にゴール前でのラッシュの勢いは凄まじく、前半は防戦一方になる場面も多くあった。
そんな中、39歳のFL榎村がチームを引き締める。
「ポイントに入るところはしっかり入らんと。ベテランとか関係ない」
もうすぐ40歳になるが練習参加率と流れ出る汗の量は変わらない。主将の任を外れてから12年。変わらずチームを支え続けている。
若手メンバーにとってはアピール絶好の機会。福岡出身のWTB福島は今季兵庫県内のクラブから移籍してきた。「試合に出たい、上手くなりたい」という気持ちは誰よりも強い。
だがどうしても気合が空回りするのか、ボールをもらう場面でも余裕がなくミスが出てしまう。それでも地道なキックチエイスからターンオーバーを見せたり、トライも奪った。
19歳・CTB尾方は徳島・貞光工出身。勤務先が夜勤などが入るためなかなか参加できないが、会社の寮などで個人トレーニングを欠かしていないという。トレーナーの東畑は「(まだ若いから)ほっぺがツルンツルンなんですよ」と、妙な所で関心していた。
後半からSHに入った瀧村は近大1年生・滋賀は光泉高校出身である。チームには主将の谷をはじめ経験豊かなSHが多い。パイセンから多くの技術や経験を吸収すれば今後楽しみな存在になっていくはずだ。
主将経験もあるFL伊藤マイクの仕事ぶりには、谷も「さすがですね」と感心する。破れかけたボロボロのインナーを着ての奮戦。「これを着ると引き締まるんです」という。
来月に43歳になる太田がWTBに入った。99年の全国優勝時には、全国大会1回戦にも出場している。某企業の技術屋さんでもあるが、体脂肪10%以下の肉体と入念なストレッチは当時から変わっていない。
他のベテラン世代チームから誘われたこともあったが、「年齢とかに縛られるのはイヤやねん。抜かれたりしたらまだまだ悔しいし、若い選手たちとやっていきたい」と挑戦を止めない。
同じ40代でも、台風より痛風が怖い意味のない大胸筋PRとはえらい違いである。
はるばる三重県から駆け付ける古村は57歳の今季も元気に参戦している。六甲クラブ若年期からプレーを続ける大ベテラン。GMでもある東田哲也が関東勤務のため、貴重な50代プレーヤーである。ラグビーへの情熱は少しも衰えることはない。
ちなみに上の写真は試合前のアップで19歳の瀧村に体を当てる古村。その年齢差ナント38歳である。
最終的には点差は離れたが、最後まで歩々ラガーズに苦しめられた一戦だった。
「どんな試合でも同じモチベーションでラグビーできる雰囲気を作ることが重要と改めて感じました」
と谷。
「ベテラン選手は若手に指導を、若い選手は先輩からどんどん学びとって欲しい。それが六甲クラブの厚みになっていくと思います」。
19歳から57歳までの様々な選手・スタッフの思いが全国に「つながっている」ことを全員が認識していかなければならない。(三宮清純)