長年、互いに切磋琢磨して関西のクラブラグビーを引っ張ってきた。
毎年書くが、両クラブの間柄は「馬場―ザ・ファンクス(D・ファンクJr・Tファンク)」の間柄であり、決して「猪木―藤波」ではない。
今年の定期戦は「名古屋クラブ創部50周年記念試合」と冠され、ネーミングライツで呼称が変わった「パロマ瑞穂ラグビー場」で行われた。
「人数少ないけど、この場にいるメンバーが六甲クラブの代表。絶対に恥ずかしくないゲームをしよう」
主将の谷が諸事情で欠席したのを始め、日曜日に仕事が重なったメンバーが多く、昨年よりも厳しい布陣となったが、谷主将からゲームリーダーに指名された加来がチームをまとめる。
「FWが負けなければ試合も負けない。初めからいこう!」
風下からのキックオフ。この季節には珍しい強風が瑞穂に舞う。ラインアウトもなかななかクリーンキャッチができない。
50周年記念ジャージを纏った名古屋クラブは風上を利用して積極的に仕掛けてくる。
前半5分、ゴール前ラインアウトのこぼれ球に鋭く反応して大きく前進、フォローに入ったツーに、№8板垣が体を寄せてゴールラインを超える。竹内のコンバージョンも決まり7-0と六甲が先制した。
しかし名古屋もすぐさま反撃。六甲のコミュニケーション不足からのミスをつき、16分にあっさりトライを取り返す。
その後しばらくこう着状態が続く。名古屋は球際へのこだわりが素晴らしく、六甲もいいテンポでの攻撃が続かない。この日の六甲のSOは前田。慣れないポジションと、風下もあってか、ゲームメイクに苦悩する。
そんな中、WTB三木が個人技でハーフライン付近から巧みにすり抜けトライ。流れを変えにかかる。
先発の6番に入った伊藤マイク。№8板垣とともに接点での強みをみせる。名古屋のカウンター攻撃を何度も激しいタックルで止めていく。
名古屋クラブはラインアウトのDFの場面でもしっかり上げて六甲にプレッシャーをかけていく。ゴール前の六甲のDFがやや淡泊なところもあり、前半19-14。六甲は途中で板垣の負傷退場もあり、多いに不安を残してのハーフタイムに入った。
「0.1チャンネルの意識徹底」
「SO前田に情報をどんどん伝える」
「相手の弱点をついて、味方の長所を生かす」
風上の後半、六甲が反撃に出る。
前半苦悩したSO前田は積極的に仕掛けてボールを前に運んでいく。巧みなキックもありFWを敵陣に送り出していく。
この日一番の動きを見せたのはLO・福島清登。今春、福島勇樹のアニキで、博多からやってきた。巨体を生かしたアタックと密集での仕事ぶりは素晴らしい。相手ボールに執拗に絡み、再三六甲のピンチを救い、攻撃面でもFWの核となり、MOMに輝く2つのトライを決めた。
一方弟の勇樹は今季からFWに転向。元々のポジションはFLなので「戻った」というのが正しいのか、昨年WTBで、オドオドしていた面が控え、ボールを持つ場面も増えた。頼れる大好きなアニキがクラブに加わり、本人も積極性や自信がでてきたようだ。
後半残り20分過ぎから、ベテランと新人選手を投入していく。最後はLOツー仕上げのトライ。38-19で勝利を飾った。
「FWがよく頑張ってくれました。福島アニキやツーさんが前に出てくれた。」
ほぼ交代がいない状態だったBK。FBの玉川が試合を振り返る。
慣れないポジションの選手もいてリズムテンポが上手くいかない場面があった。
ケガ人も出た。
そんな中でも互いにフォローをしあってつかんだ勝利。
「この勝利は大きな意味を持ちます。」
関西から結果を首を長くして待っていた谷主将も手ごたえをつかんでいる。
六甲と同じ昨年度ベスト4の名古屋クラブも、チーム力はまだまだこんなもんじゃない。
必ず秋シーズン、全国大会には全く違ったチームになっているはずだ。
ノーサイド後、何度も戦っている気心知れた「仲間どうし」で写真におさまった。
次は全国大会でー。
今年も定期戦の歴史に友情の一ページが刻まれた。
(三宮清純)