全国への決意
試合前のアップ会場。途中で谷主将がアップを止めて円陣を組ませた
「反応が薄い。(同じ場所でアップしている)向こうの方が声が出てるよ。本気で勝ちに来ているよ。こんなんでいいの?」
前節で近畿リーグ優勝を決め、全国大会出場を決めていることからの、緩みがちなチームの雰囲気を引き締める。そしてキックオフ直前のロッカールームで数点のポイントを掲げた。
「春とは違うところをみせたりましょ!」
どこからともなくそんな声が出た。相手のスーパースターズとは春のオープン戦で勝利はしたものの、FWに不満が残る内容だった。その雪辱と同時に、全国大会へ向けてのチームの姿勢が問われる近畿リーグ最終戦。六甲戦士たちは気合を入れてキックオフに臨んだ。
開始7分。中央付近での攻防からFL伊藤が敵陣を突破して大きくゲイン。最後はWTB和田が上手くフォローに入り左中間に滑り込む。
FWも負けていない。ラインアウトからモールを力強く押し込み、最後は№8小野がタッチダウン。12―0と点差を広げていく。
さらには18分。中央付近のスクラムから右に展開。FB三木が巧みに相手防御をすり抜けボールはWTB大塚へ。右中間にトライかと思いきや、敵のフォローをすり抜けてゴールポスト真下まで回り込んだ。チームも自分も待望の「六甲FB」での初トライだった。
だが、そのあとが続かない。欲が出たのか、自陣からでも強引に仕掛ける場面が続いた。
「ハーフタイムに、『さすがにあれはFWもシンドイ』とBKで修正しました。それでも、みんな切れることなくデフェンスできたのは収穫だと思います」(谷主将)。
修正点をいくつか掲げた後半早々、FB三木が個人技でトライを決めたあたりからスーパースターズの防御がやや甘くなりだし、六甲のトライラッシュが始まった。密集からHO加來がボールを持ちだしてインゴールに転がり込む。前チームの仲間が名づけた「スイカ泥棒トライ」はこの後もう1本続いた。
この日はFW、特に前一列の動きがよかった。闘犬PR加村はハイパントでのプレッシャーチエイスでタックルが好タックルが決まって気を良くして再三ボールを持って突進を見せる。
その巨体をまだまだ十分に生かし切れてないPR永田もおっかなびっくりな突進で防御を突破していく。
そして地元・奈良県出身のベテランLO大内だ。SH谷からのボールをタイミングよく受け取り中央突破。20メートルを走り切った。親里球技場でのトライは「高校時代の94年以来」となるメモリートライとなった。
WTB大塚はタックルされてもなかなか倒れずグイグイ前にでて後半もトライを重ねる。CTB吉本も「天理高」出身らしい好タックルで相手の攻撃を寸断した。若い選手もチームに馴染んできている。
キッカー不在のためコンバージョンが伸びなかったが、合計11トライを重ねて61―0でのノーサイドとなった。
「完成度の高い試合だったと思います。特にFWがリーグ戦を重ねるごとにレベルアップしていくのには目を見張るものがある」
と、谷主将が一定の評価を上げているが、当のFW連中は、まだまだ満足していられないようだ。
「もっと強いスクラム、セットプレーの絶対安定を構築していかないと…」
全国大会には多くの強豪が集まる。どの試合でも、簡単に点を取れる試合はない。ましてや昨年度の準決勝で、FWは苦戦を強いられた。あの悔しさを知るから、もっと強くならなければとの思いが駆り立てられる。
「全国まであと2カ月弱。個人もチームもさらにレベルアップしていこう。年末に入るし、それぞれの仕事も忙しくなってくる。それでも時間を作ったり、自分がチームのために何ができるかを考え行動して行こう」
全国モード、突入。
六甲ファイティングブル。
今はただ走り抜けるのだー。
(三宮清純)