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全国大会決勝雑感

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瑞穂の風に吹かれて

 「ありがとうございましたッ」ー。

 決勝戦の表彰式後、観客席とベンチに深々と頭を下げた後、六甲ファイティングブル主将・中村圭佑は一人、ロッカーの奥に消えた。

 誰もそのあとを追おうとはしなかった。数分後、戻ってきたキャプテンに、誰もその理由を聞こうとはしなかった。

 自分たちの思った通りにいかなかった決勝戦。「前半で点を取れなかったのが全て。もっと早めに戦い方を修正しておけば…。キャプテンの責任を感じてます。応援していただいたみなさんに申し訳ない…」と責任をすべて背負い込んだ。

 「完敗やね。FWはセットプレーでミス。BKはキックミスで前半に敵陣で攻める時間が少なかった。外国人選手のプレッシャーがきついのはわかってたんやけど、思うようにプレーができなくてミスが連発したんやな。前夜のミーティングで『我々の脅威は緊張して空回りする事』といったんだけど。それがモロに的中した形になったね(苦笑)。もっと自信を持ってやらんと」

と北迫コーチは冷静に分析する。

「悔しい。僕がキャプテンだった3年間よりも今年が一番悔しいです」と話すのはSH谷だ。

「5年前の決勝戦を経験しているのが4人ぐらい。みんな緊張していた。もっとフィジカルで強くならないとダメですね。僕自身もプレーの質をもう一度高めてもっと信頼される選手になりたいです。キャプテンが全ての責任じゃないのは誰でもわかってることですが、圭佑を勝たせてやりたかったー」。

 2017年の2月19日に就任してからちょうど1年。中村圭佑は試行錯誤を繰り返しながらキャプテンを務めてきた。最初のうちは、はにかんだり、言葉も途切れがちだったが、シーズンが経つにつれて言葉にも熱さと責任感が強くなっていった。

 選手それぞれの職種や年齢が違うクラブチーム。限られた全体練習の中ではどうしても個人差などが出て来る。

 「でもそれがクラブチームの面白さだと思うですよ。工夫して勝っていくのが本当に面白い」。

 試合では真っ先に体を張り、敵を前になぎ倒すタックルで仲間を鼓舞していく。

    近畿リーグが終わった頃から中村主将は「意識、意思統一」を何度も選手たちに呼びかけた。時には語気を荒げる場面もあった。

チームの可能性を確信しているからこその強い言葉に仲間も呼応。全国大会でで一戦ごとにチームが成長していくのが分かった。

 

 中村はまた、シーズンが進むににつれて「感謝」と「主将の責任」を口にすることが多くなってきた。

 「スタッフやトレーナーの皆さんなど、クラブチームなのに裏で支えてくれる人たち、OBの皆さんなど応援してくれる方々がこんなにいるなんてキャプテンになるまで分からなかったです」。

 勝利こそ最大の恩返し。だからメンバー選考には悩みに悩んだ。特に決勝戦のメンバー発表は最後の最後まで苦しんだ。

そして「すべての責任は僕にある」として、メンバー発表後のラインに、「圭佑がこんな文章書くのか?」と驚くほど、熱く心のこもった決意のメッセージがチームLINEに流れた。

 

 決勝戦、時間はあっという間に過ぎた。自分たちが思い描いたラストシーンではなかった。

「負けたのはキャプテンである僕の責任」という中村を誰も責めたりはしない。 

 「日が経つにつれて悔しさがますますつのってきます。来季に向けて今からしっかり準備します」(中村主将)。

 今季のスローガンだった『ENJOY』。日本一を決める戦いは選手もスタッフも色々なものが空回りして、本当の『ENJOY』を味わえなかった気がする。楽しく終われるのは1チームだけ。

 友よ、来年またこの場所で心からの笑顔と涙を流そう。

(三宮清純)

 

 

 


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