言い訳はオワリ
2月の全国大会決勝から4カ月。パロマ瑞穂ラグビー場に戻ってきた六甲は、全く違うチームになってしまったのか。
12-22。セブンズに続いて15人制でも負けた。完敗だった。
もう四十年以上続く名古屋クラブとの定期戦。ここ数年は名古屋クラブのご厚意により、最高の環境でプレーできている。
キックオフから数分の攻防で、この試合は厳しいものになると感じた。一人の緩いタックルが外されて、名古屋クラブに大きくゲインを許されると、防戦一方の展開が続く。0.1チャンネルには立つが、「初めの3歩」がないのでデフェンスラインの上りが遅い。
アタックでもチャンスをつかむが雨でピッチやボールが滑り再三ミスが目立った。
前半18分。受けの防御が続いき、最後はラックを割られて右中間に先制トライを許す。インゴールの円陣で修正し、ようやく目が覚めたのか、六甲は反撃に出る。
何度も名古屋ゴール前に迫るが、FWラッシュが単調気味となり、名古屋クラブの分厚い防御もあって、攻め疲れたところでノックオンや反則の繰り返し。前半を無得点で終えてしまう。
重苦しいロッカールームの雰囲気。何とかこの状況を打開しよう、チームを奮い立たせようとする言葉が出るが、空回りしているような印象を受けた。
「こんなタイトな試合ができるのはめったにない。ちょっとでも気緩めたら一気にやられる」
この日のゲームリーダーを務めた安部副将がまとめ直し、後半のピッチに臨んだ。
だが、後半開始早々、ラインアウト→モールでいともあっさりトライを許し、0-10と点差を広げられる。
この状況を打破しようと、安部副将は積極的に仕掛けていく。
数的優位を作って、WTBに入った亀谷がゴールラインに迫ったがあと数センチのところでライン外に押し出される。それでもそのすぐ後のチャンスに№8高原が強引に名古屋防御を突破してインゴールになだれ込んだ。
さらにはペナルティからの速攻で左に展開、最後は「負けるのが本当にイヤなんです」とFB安部が左中間にトライを決め、12-10と逆転に成功する。
これでようやく六甲に落ち着きが戻ったかに見えたが、名古屋クラブは少しも慌てることはなかった。
今季からPRに元豊田自動織機の長谷川が加入したことでスクラムが格段に強くなり安定。ラインアウトのミスも少なかった。
また元サントリーの宮本がコーチ兼選手でチーム全体をリード。方向性や戦い方、一対一でのフィジカルなど、確実にチームが強化されているのが分かった。宮本は試合でも前半はCTB、後半はFBで冷静にゲームをコントロール。名古屋の選手が終始落ち着いて余裕を持ってプレーしているのが印象的だった。
逆に六甲は何度も敵陣に攻め込むが、肝心なところでラインアウトのミス、トライチャンスでノックオンが続き、足が止まっていく。終盤、真ん中を割られてトドメのトライを許し、勝負は決まった。
リザーブが40代の3人しかいなく、ほぼ15人で戦うしかなかった。ケガ人やいつもと違うポジションに入った選手、初参加の選手もいた。しかしそんなのは言い訳でしかない。
「(自分たちが弱くて)普通に負けた。これが今の実力。また2月にこの場所に戻って来られるように、やっていかないと」
昨季、決勝まで行ったとことで、自分たちの力を過信してはいないか?「北海道バーバリアンズに負けた悔しさを忘れない」と誓っておきながら、新シーズンのチームの動きはあまりに「ユルイ」。「人任せ」な雰囲気がチームに漂っているのは否めない。
選手の異動などで毎年クラブの戦力が大きく左右するのは“クラブの常”だが、新戦力に頼るのではなく、従来選手の奮起がなお一層望まれる。
はっきり言おう。今の六甲は強くもなんともない。
「どんな試合でも、どんなメンバーでも、六甲は勝たなきゃアカンチームだと思うんです。いつも洗濯されたジャージ、備品がちゃんとそろっている。補食を差し入れしてくれて、写真を撮ってくれるOB、サポートしてくれるトレーナーや学生、裏方で働いてくれるマネジャー・・・。
それが当たり前のような雰囲気になってるけど、全然当たり前じゃない。本当に多くの人が裏で支えてくれている。僕らは勝利でそれにこたえないといけない」
帰りのバスに乗車する前に、安部主将が話した言葉は、歴代の主将が何度も口にしてきたことだ。今一度自分たちに言い聞かせるように、この日参加できなかったメンバーにも伝わるように安部は熱く語った。
我々は、別にラグビーを「生業(なりわい)」とはしていない。周囲からすればたかがラグビーだ。
しかし大切な「生きがい」の一つだ。
人生、生きてればそれぞれに様々な困難が出て来る。逃げ出したい時だってある。だけど、そこを挑戦していく姿勢を教えてくれたのが「ラグビー」ではなかったか。
言い訳はもういいだろう。
立ち上がる姿勢、仲間を支えていく姿勢
自分の「生きがい」を大切にしたい。
(三宮清純)