楽しむために「意識」せよ
台風25号の影響で、10月なのに夏を思わせる蒸し暑さが漂う加古川・日岡山グラウンド。
兵庫県リーグに所属するもう一つの六甲クラブ、「六甲レッドウイングス」の初戦が行われた。
レッドウイングには様々な世代の選手が集まる。
・高校卒業したての10代の選手
・30代で一念発起してラグビーを始めた選手
・ケガから実に1年ぶりに実戦の選手
・試合経験を積み重ねたい若手
・経験豊富なベテラン選手
・「惑ラグビー」では物足りないという管理職世代
・還暦を超えてなお、「現役」にこだわるレジェンド
ファイティングブルの中村主将や安部副将は給水係などでチームをサポートする。 キックオフ早々から目を見張るタックルで周囲を驚かす選手がいた。京都から駆け付けたFL鎌田だ。日本一にもなった主将経験者の激しく鋭いリアクションは、相手に反撃の糸口さえつかませない。こぼれ球にもよく反応しお手本になるプレーを連発した。
昨年の大ケガから実に1年ぶりに実戦を迎えたのがLOの福島清と№8志磨だ。古傷の状態を確かめながらのプレーだったが二人ともまずまずの動きを見せた。
中村主将からこの日のキャプテンを任されたのがSH瀧村。的確な指示と自らよく動いてトライを量産する。高校卒業したての4年前に「六甲デビュー」を果たしたのがここ日岡山G。NZ武者修行も経験し、スピード・判断・突破力も著しく成長している。
GMの44歳榎村や、48歳の管理職ラガー藤原も元気な所を見せる。この二人は99年度、全国クラブ大会が初めて秩父宮で行われた時のV戦士。惑リーグから特別参戦の舛尾も、要所要所でさすがの動きを見せた。
そして、この男である。試合のたびに三重からはるばる駆け付けるレジェンド。「世界のコムラ」こと古村大輔61歳。
「出番」が近づくとカメラを自分より30歳以上の後輩に渡し、少ない時間でアップを完了してピッチに飛び出していった。
ボールタッチこそ少なかったが、トイメンをしっかりマーク、チエイスなど基本に忠実な動きを見せた。還暦を過ぎても「惑」にこだわらず、若い世代との戦いに挑む古村の姿は、六甲クラブの精神、「チャレンジ」という今年のスローガンにもつながっている。
KWOも点差こそ開いたが、決して勝負をあきらめず、最後まで果敢に攻撃をしかけてきた。85-12でのノーサイドとなった。瀧村キャプテンは「(試合への)入り方や、前半は上手くいかない面があったけど、時間が経つにつれてよくなってきた。(若手は)近畿リーグもあるんだから、もっとアピールしていかないと」と話した。
交代指示として試合を見守った中村主将も「やはり『意識』って本当に大事だと思います。やるなら初めから全開で行かないと。昨日(土曜日のフィットネス)だってそう。最後の方で余力を残しておくんじゃなしに、途中でつぶれたっていいから初めから全力でやらないと意味がない。(仕事などで)なかなか来れてない人は、なおさら全開でいかなきゃ」
厳しいこともいう主将だが、経験が少ない選手にもしっかりフォローを入れている。「(簡単な場面で)ボールを落としたりするのは、『意識』が足りないからです。緊張して余裕がないのはわかります。でも経験を重ねて「あ、次こんなプレーになる」と予測できるようになればボールも落とさなくなるし、プレーももっと楽しくなりますよ。なかなか難しいですけど」
大好きなラグビーを楽しむために、自分の時間をやりくりしてグラウンドに集まる。だからこそ無駄にはしたくない。わずかな時間でも真剣にプレーできるように、普段から「準備」しているベテランメンバーもいる。
シーズンはこれから本格化。毎週のように試合が続く。自分の「出番」のために「意識と準備」を積み重ねていきたい。
意識と準備をしっかりしておけば、どんな年齢でもラグビーを楽しむことができる。クラブラグビーの「原点」が六甲レッドウイングスにはある。
(三宮清純)