まだ走れ、もっと走れ!
桂川のほとりにある“京都ラグビーの聖地”は、今秋から最先端の人工芝に生まれ変わっていた。
吉祥院球技場。前節の試合が台風24号の影響で順延、この日が近畿リーグ2戦目となる。
「特に僕からは何もありません」(中村主将)
練習の時から言い続けている『意識』を、選ばれた23人が最初から遂行できるか。初戦では立ち上がりが悪かったこともあり、『最初の20分』が注目された。
スーパースターズのキックオフ。ややもたついた感があったが、ターンオーバーから一気に逆襲。FB安部が深く斬り込み、WTB拝原からボールがつながり、最後は海外勤務から9月末に帰国したばかりのWTB三木が逆サイドから上がってきて右隅に先制トライを決めた。開始1分弱での先制トライで流れをつかむ。
4分にもSO衣川の中央突破からFWラッシュ。PR越田がトライを決めて10-0とした六甲だったが、ここからスーパースターズも激しいところを見せる。マイボールを確保すべくキックオフを工夫したり、素早い出足で熱く痛い防御を六甲に見舞ってミスを誘う。
しかし激しさなら負けられない。六甲もCTB藤坂が激しい突破で敵陣に斬り込んでいく。ゴール前ではFWが重たい当たりを繰り返し、細かいミスもあったが、ジワリジワリとスーパースターズにダメージを蓄積させていく。
19分には押し込みすぎたスクラムから出たボールをSH谷がデフェンスをかいくぐりながら右隅にトライを決めた。続く21分には自陣深くにキックオフを蹴り込まれたが、WTB拝原が再び巧みなランを見せて敵陣に切り返し、最後は重い腰を生かしてSO衣川がトライ。このあたりからスーパースターズの足も止まりかけ、タックルもやや高くなってきた。
その後も六甲は攻撃の手を緩めずにトライを重ねていく。この日は相手のミスにも鋭く反応して逆襲につながる好プレーが目立った。31分にはSH谷が相手防御裏に蹴り込んだボールをWTB三木が拾い上げトライ。前半終了間際にはSO衣川がトライを決め43-0でのハーフタイムとなった。
「スクラム、セットプレーは素晴らしい。ただ、相手の防御が高くなるにつれて、ブレイクダウンも高くなってきている。デフェンスでもちょっと危ない場面があった。FWはまだまだ走れる。もっと走らなアカンわ」(北迫コーチ)
後半早々、六甲は敵陣に迫る。相手タッチキックをSO衣川が猛チャージ。インゴールに転がり込んだボールをそのまま抑え込みこの日3本目のトライをあげる。
今季はCTBで起用されることが多いが「僕、足遅いんで(苦笑)、スタンドの方がいいんですよ」と本音をポロリと漏らすこともあるが、この日は安部副将にキッチリとアピールできたか。層が厚いBK陣、メンバリングもリーダー陣の悩みの種だ。
スーパースターズの激しい当たりもあり、この日は出血者が続出した。血を見ると逆にアドレナリンが高ぶるのか、CTB藤坂は「いてまえ突進」でさらに激しく、LO平岡も巨体に似合わぬ内股で激走する場面が見られた。
後半も6トライ重ねて81-7でのノーサイド。FB安部副将は
「アタックはやってきたことが形になりつつありますね。精度はまだまだですが。デフェンスも去年とメンバーが違ったりするんですが、皆、集中していると思います。でもまだまだですよ」
とある程度の手ごたえはあるが、「まだまだ」を強調する。
「全国大会」を目指し、各地で激戦が続いている。特に関東では「東日本選手権」「東日本トップクラブリーグ」で毎週のように強豪チームがしのぎを削っている。
「これからもっと相手が強くなってくる。スキルテクニックや、メンタル、フィットネスが今のままでいいのか?選手一人一人が考えて練習や試合に臨んで欲しい。選手、チームともにもっとレベルアップができるはず」(北迫コーチ)
試合後は多くの選手がインゴールでフィットネスメニューをこなした。個人やチームの精度を上げるため、今自分たちがするべきことは…。
六甲ファイティングブル。
今はただ走り抜けるのだー。
(三宮清純)