己に厳しくあれ
FB安部からWTB和田に渡った先制トライから、最後まで攻撃の手を緩めずに25トライ、157点。
奈良県ラグビーの聖地・親里球技場を六甲FBが縦横無尽に駆け巡った。
中村主将、北迫コーチなどが仕事で欠席したこの日。いつも以上に選手一人一人の「意識」が求められた。
「誰かに任せるというんじゃなしに、どれだけ自分がチームを引っ張れるか」
ゲームキャプテンを務めた安部副将が気合を入れる。
この日の相手、京都フリークスは「三菱自工京都OB」から発展したクラブ。全国大会にも出場経験があり、六甲とは関西クラブAリーグ時代から激戦を繰り広げてきた古豪である。今季からAリーグに復帰、初戦で昨季近畿リーグ2位の文の里に勝利している。六甲は前の試合以上に、キックオフから集中力を爆発させた。
先発を任されたSH瀧村が勢いよくラインを動かし、自らトライをあげた後は三木の連続トライを演出する。
反撃に出たフリークスのパスミスを見逃さず、ベテランLO綿谷が反応よくインターセプト。ゴールまで35メートルを走り抜ける。
フリークスも黙ってはいない。巨漢CTBアーロンの突進を軸に突破を試みるが、これを45歳のFL西谷がドンピシャでバチンと止め勢いを止めた。
「オレを忘れてもらっては困ります!」とばかりにアピールしたのはLO上野だ。今春から社会人となった昨季のMVP選手。配属先の浜松から駆け付けた。ちゃんとトレーニングしていると見えて、最後までいい動きを見せた。
今秋東京転勤になった亀谷も参加。慣れない試合球に苦心しながらも奮闘した。二人とも少ないチャンスに照準を合わせ、激しいポジション争いに挑む。 前半だけで82対0。ともすれば緩みがちな雰囲気を安部副将がハーフタイムで引き締めて後半に臨む。選手を入れ替えたり、ポジションを変えながら色々なパターンを試していく。
加村、小牧のPR陣にもトライが生まれた。フリークスは点差が離れても最後まで闘志を忘れず果敢に挑んできた。両軍の反則数は六甲2、フリークス3。「点差が開いたわりには反則も少なく、規律あるゲームだったと思います」(飯田レフェリー)
終了間際に六甲はモールを押し込んだ。タッチダウンしたのはリザーブに入ったHO榎村GMだった。FBの公式戦でトライを決めたのは何年ぶりだろうか?ベンチが沸いた瞬間だった。
23人全員が最初から最後まで攻め続けた。157点は、六甲ファイティングブルの公式戦での最多得点となった。
「主将がいない中、皆集中してそれぞれの役割を果たしてくれた。これをもっと積み重ねていきたい」(榎村GM)
「出られないメンバーやスタッフがしっかり試合のサポートしてくれてることを、ジャージを着たメンバーはもっと意識して責任を果たしてほしいです」(安部副将)
ノーサイド後、多くのメンバーがグラウンドに残りフィットネスで自分を追い込んだ。メンバー外は試合前にもクロカンランで走り込みを続けている。全国大会まであと3カ月。積み重ねていかなければならないのがたくさんある。
六甲ファイティングブル。
今はただ走り抜けるのだー。
(三宮清純)