もっと熱く、もっと激しく!
夏を思わせる、西宮市は関学大グラウンド。
今季、初めての実戦となる機会、集合時には緊張感とワクワク感が交錯していた。
「練習時からずっと言っていましたが、今季初試合のファーストプレー、ファーストアタック、ファーストタックル…はじめから全開でいきましょう!」
相手は関学大。先方の都合で30分×2本となったが、毎日の厳しい鍛錬で豊富なフィットネスと成長続ける学生たちに、どれだけ通じるか。
「初めての試合、メンバーもたくさん変わっていきます。ミスしても全然OK。どんどんチャレンジしていきましょう!」(安主将)
六甲のキックオフで始まった。関学は予想通り蹴り返さずに果敢に展開してくる。ライン際のタックルでしとめたかったが、たくみにつながれ、一気に自陣ゴール前まで返されてしまった。
いきなりの大ピンチとなったが、ラインアウトのこぼれ球に、この日はFLで出場の梅田が反応良くターンオーバーしてピンチを脱出する。
関学の素早いテンポには合わせることなく、六甲は確実に敵陣でプレーを続ける。再三ゴール前でフェーズを重ねるが、初戦ということもあってか、肝心な所でのミスが続く。
一進一退の攻防が続いたが、前半9分、敵陣でフェイズを重ねた六甲。FB安部が斬り込んでゴール前に迫ると、最後はCTB藤井が右中間に飛び込み先制のトライを決めた。
これで落ち着きを取り戻すかのように見えたが、15分過ぎに関学のSOが変わると、関学のラインが大きく動くようになってきた。16分にはやや安易に防御を突破されて一気に持っていかれ、右中間にトライを許し、5ー7と逆転される。
気を取り直してのリスタート。六甲は敵陣でプレーしていくが、またもや防御が簡単に突破されて、一気に自陣まで持って行かれて苦しい戦いが続く。
六甲もアタックを果敢に仕掛けるが、ミスも多くゴールラインを越えることができない。
前半終了間際に1トライを許し、5ー14でのハーフタイムとなった。
少ない時間帯で修正点をあげながら、後半での巻き返しをはかる。バックスメンバーを大きく入れ替え後半に臨む。アタックで積極的に仕掛けて行くが、関学の鋭く分厚いタックルに盛り返される場面が目立った。ブレイクダウンでも中途半端な寄りではたちまちターンオーバーを許されてしまう。
流れを変えるべくFWもゴール前にラッシュするが、トライは認められなかった。
関学大も次々とメンバーを入れ替えフレッシュな戦力を投入していく。どの選手も今のレベルより上のクラスを狙っているために必死のプレーだ。後半9分、26分と六甲はトライを献上する。
終了間際の29分、敵陣でのPKにHO山田が自ら持ち込み意地のトライ。
ラストワンプレー、いやレフリーの好意もあり六甲は最後の攻撃を仕掛ける。ターンオーバーから逆襲していくが、オフロードパスがつながらず、関学の逆襲にあいトドメのトライを受け、10ー33でのノーサイドとなった。
「関学さんにもっと点取られていてもおかしくない内容でした。やはり接点の部分で劣勢になってしまった」
と安主将は話しながら、前向きに捉えた。
「トライされそうな時に必死にバッキングに返って防いだ場面も何度もあった。これが僕らの今の力。これを出発ラインにしてあげていきましょう」。
今季初実戦、多くのメンバーが入れ替わり、慣れないポジションの選手もいた。随所にいいプレーも見られた。しかし、見ている方からすれば「もっとやれたはず」と感じたことも事実だ。
「試合中の修正能力がもっと必要かなと感じました。」と後半途中から出場した谷TDは感想を述べた。
ピッチの後ろからずっと見守っていた榎村GMは
「なんか、前半にトライを取られてから静かでしたね。振り回されたり、苦しい防御の場面で、自分から「いけなかった」のか「いかなかった」のか。もっと気持ちを全面に出していかないと」と、ハッパをかけた。
久々の実戦からくる緊張感、入りたての選手はまだチーム慣れしてない面もあり、思った通りのプレーをできなかった選手もいるだろう。
通用する場面だってあった。積極的にしかけてのミスもあった。だが劣勢になったときにどうするか、これまでのように静かになってしまうのか、それとも、互いに呼び掛け合いもっと熱く激しく、相手に立ち向かって行くのか。
キックオフミーティングの時に安主将は「復活」をスローガンに掲げた。それはチームだけでなく、メンバー全員の内なるものにもうったえかけるものだ。
情熱を呼び醒ませ。もっと熱く、もっと激しく。
そうすればラグビーも仲間との時間も、
もっともっと楽しくなるはずだ。
(三宮清純)