主将・谷晋平に訊く①
~2015年シーズン、六甲クラブが目指すもの~
クラブ内の誰もがそう思った。
卓越したキャプテンシーで引っ張った2014年シーズン。
「無敗」のままで終わったからこそ、「谷主将で日本一」がクラブの総意になった。
しかし、本人には相当な葛藤があったようだ。
迷い、悩みながらもスキッパーを引き受けた谷主将に、昨季を振り返ってもらい、また新シーズンについて色々訊いてみた。
-まずは先の全国大会準決勝(2月15日、瑞穂ラグビー場)。北海道バーバリアンズにロスタイムで追いつかれて24―24.内容差で決勝に進めず、シーズンが終了しました。あまりに劇的な結末でしたが、その瞬間、感じたことは?
「『負けた-』と思うと同時に、ホッとした感が強かったです。結果として決勝には進めませんでしたが、(寺田のトライや、三木のトライなど)素晴らしい形でトライできて、1年間やってきたことが報われたかな、と。ホッとしたのはプレッシャーからの解放です。その瞬間は負けた悔しさはあまり感じませんでした」
-涙は最後まで見せなかった
「できるだけのことはやってきた自負はありました。1年間やってきたことに対しての結果は出ましたから、特に泣くことはなかったですね。
ただ、やってきた結果がで他にも関わらず勝てなかったことは今年の課題になると思います」
ー主将のプレッシャーは大変なものだった
「いや、相当キツかったです。正直、嫌で勝敗に関係なく『早くシーズン終わってくれ!』と思いました(苦笑)。味方を鼓舞することで、自分自身を鼓舞していた面があります。いいメンバーがそろっていたので、負けられないプレッシャーがありました。僕自身、ラグビーを楽しめなかった」。
ー多くの人から「来年も!」って言われたそうですね。
「準決勝終わって、帰りの新幹線で東田さん(GM)から『来年もよろしく!』というメールを頂きました。やっとプレッシャーから解放されたのに、なんでやねんって思いましたが(苦笑)」
試合後、谷はメンバー一人一人にメールで感謝の言葉を伝えている。それには多くの返信があり、
「谷さんだからついてきました」
「(自分の)東京転勤が悔しい。また来年もこのチームでやりたいです」
「もう1年続けるべきだ」
など、「続投」を求める声が続出したという。
「帰って何人かのメンバーと飲みに行って『2014年シーズンのベースはできたから、来季はこのまま…』とか言ってくれた先輩もいたし、また仕事で準決勝に来られなかった由良さん(SO)に『1年で成果なんて出ない。2年はやらないとアカン』と言われました。他のメンバーからもうれしいメッセージをもらって、本当に1年間やってきてよかったと思いました」
ーそれでは然に「来年もいっちょ、やるか!」と気持ちが固まってきた?
「いや、それでもキャプテンはやりたくありませんでした。またもう1年あの同じプレッシャーの中でやるのかと思うと…。(仕事のことなど)色々考えました」。
六甲クラブの主将決定制度は、会員(選手・スタッフ)の立候補または推薦によって候補者がたてられ、選挙によって決められる。3月29日の「主将決定臨時総会」で、2015年の六甲ファイティングブル主将は、谷晋平に決まった。
「尊敬するチームのメンバーが決めてくれるのであれば、頑張ろうと思いました」。
主将のプレッシャー。
「仕事の時でもチームのことが頭から放れなかったことがありましたね。正直、俺は向いてへんとか…」とはある主将経験者の言葉である。
高校や大学なら同世代だが、クラブには様々な年代、ラグビー歴の選手が集まる。コミュニケーションの取り方などは世代によって違ってくるはずだ。
もちろん仕事も手を抜くわけにはいかないし、谷は独身だが妻帯者には家族の理解と応援が必要になってくる。それでも六甲の主将を経験した全ての男たちが
「ラグビーでも人間的にも大きな経験になった。本当にやってよかった」
と答えている。
「覚悟」を決めた谷主将は、キックオフミーティングで、誰もが想像できなかった今季の方針を発表する。
~その②に続きます~