譲れない気持ち
急きょ決まった試合にも関わらず、大阪ガス今津グラウンドには多くのメンバーが集まった。
トップウエストAに所属する大阪ガスを相手に、春シーズンから取り組んできたことがどれだけ通用するか注目された。
リーグ戦開幕まであと1か月。皆、口にはしないが、アップからこの試合にかける意気込みがヒシヒシと伝わってくる。
特に8対8で組まれたスクラムでは、試合前の合わせだというのにフロントローが互いに目を合わせないほどのバチバチ状態になるほどだった。
「(大ガスの選手は)身体つきもしっかりウエイトしてるのが分かる。タイトな試合になるけど、デフェンスからしっかり体を当てていこう!」
(中村主将)
大ガスのキックオフで始まった。さすがはトップウエスト。中途半端なブレイクダウンでは巧みにボールに絡まれ、ターンオーバーから速攻で仕掛けて来る。六甲は自陣で戦う苦しい時間帯が続く。
「このデカイ奴だけ、コイツだけ!ッ」
大ガスのデフェンスでノミネートされたのは超巨漢WTB寺田である。そう言われると燃えないわけにはいかない。
「最初、受けに回ると相手は調子に乗ってくる。初めからバツーンっていったらいいねん!」とキックオフ前の円陣で話していた通りに、猛突進を繰り返す。
試合が動いたのは前半8分。敵陣に入った六甲はラインアウトからモールを押し込みドライブ。最後はHO金がゴールラインを越えてタッチダウン。FB安部のコンバージョンも決まり、六甲が7-0と先制する。
しかし大阪ガスもすぐさま反撃。重厚なクラッシュを繰り返し六甲陣に攻め込んでくる。六甲はゴール前で必死に盛り返す。大阪ガスのミスもあり、しばらくこう着状態が続く。
前半20分、FWが器用な所を見せる。ハーフライン付近のポイントから左に回されたボールはLO福島→FL水上→PR小牧→HO金とFWが細かくパスをつなぎ大きく前進。最後は再びFL水上に渡って、左中間にトライをあげた。
控えめに「六甲初トライ」をあげた水上を、一番喜んでいたのは中村主将だった。高校時代同じ時間を過ごしてきた“相棒”。中村の動きに吸い付くように水上がフォローに入る。その逆もしかり。時間が経っても「ヒガシ」で徹底的に体に染みついた動きで、自然と反応していく。
「アイツも少しやる気出してきてるからうれしいですね」。(中村主将)
2人のプレーに触発されて攻守に六甲は奮闘。14-0でのハーフタイムとなった。
後半、大ガスは前半の修正を生かして六甲陣に攻め込んできた。連続攻撃を仕掛けて来る大ガスに六甲は前に出るデフェンスで対抗。密集でのこぼれ球を拾った№8中村はFBにパス。走り込んできたHO原からPR上田に渡る。上田は器用に“タメ”をつくって左に展開。安部→原→江藤に回り、最後はWTB三木がゴールポスト裏に回り込んだ。
その後も一進一退の激しい攻防が続く。大ガスも六甲のパスミスを逃さずに逆襲のトライをあげる。激闘が続く局地戦、六甲も随時フレッシュな選手を投入していく。互いに再三チャンスがあったが、大事な場面での反則が多かった。
ノーサイド直前に大ガスにトライを許して21-14。六甲がなんとか逃げ切った形になった。
「相手のミスに助けられた面も多かった。タイトな相手にデフェンスの時間が長くなったけど、チームにはいい経験になったと思う」(中村主将)。
大ガスの猛攻に対応できたことは大きな収穫。中途半端なブレイクダウンは連続攻撃の妨げになることも課題となった。入替選手も闘志を前面に押し出したパフォーマンスを見せた。まだまだチームの可能性を大きくかんじさせた一戦だった。
リーグ戦開幕まであと1か月。公式戦、六甲のファーストジャージを着るために切磋琢磨が続く。(三宮清純)