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全国大会準決勝雑観②

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神よ、ズキに祝福を

 準決勝、試合終了後のロッカールーム。慌ただしくシャワーを浴び引き揚げる中、1人の選手が顔を覆って泣き崩れていた。

 ズギレ・ヌーベ 27歳。「ごめんなさい、ごめんなさい」と肩を揺らして大粒の涙をこぼした。

   攻守に渡って奮迅した。前半20分過ぎから六甲はデフェンスの時間が長くなった。ビッグヒットで何度もピンチを救った。後半早々、右肩を痛めたが、それでも途中で退くまで身体を張り続けた。

 「勝利に貢献できなくて、とても悲しい。でもタマリバのタックル、アタックとても素晴らしかった。(話に聞いていた)足首に来る日本のタックルは手強かった」と、勝者をたたえた。タマリバクラブもまた、ズキレをマン・オブ・ザマッチに選出して讃えた。

 南アフリカ・ヨハネスブルグ出身。2年前の夏、ズキレはALT(外国語指導助手)として南アフリカから日本にやってきた。

1年目の赴任地は島根県・雲南市。「メッチャイナカ。笑 でも皆さんとても優しくしてくれました」。

 ちょうどW杯イヤーの年。予選リーグ、準々決勝、決勝など日本各地を巡りながら母国をスタンドから応援した。

「(クボタのHO)マルコム・マークスは高校の同級生。僕の姉はコリシ主将の奥さんと友達なんです。」

 コリシ主将とエリスカップを挟んで撮った一枚は一生の宝だ。

 島根の大自然と地元の人々の優しさにふれながら充実した1年を過ごし、神戸の街にやってきたのは昨年夏。市内のいくつかの小中学校で英語を教えている。「ズキ先生ッ!」と親しまれ、運動会では人気者だったようだ。 

 六甲の練習に初参加したときから、チームメイトが感じたのはその真面目な性格だった。「(土のグラウンドで)軽い合わせなのに、自分からしっかり寝てダウンボールする。皆と色々コミュニケーション取りながら、いち早くチームのラグビーを理解しようとしてますね」(内田理事)

 178㌢、95㌔。サイズはさほど大きくはない。プレーでもボールを持って暴れるよりは、相手の攻撃を根こそぎ断ち切るデフェンスが身上だ。

 「向上心がすごいですね。言葉の壁があるけど、わからないことはどうにか知ろうとします。細かいプレー、タックルのことなど僕なんかにも熱心に聞いてきます」(FL西谷)

 試合前は往年の外国人レスラーのように何も食べずに戦いに臨む。学校帰りに、24時間営業のトレーニングジムに通い、重いバーベルを上げる。普段の食事も自炊が中心で、最近は大好きな寿司も自分で作れるようになったそうだ。

 「南アフリカは生の魚も食べるから、スシ、サシミ大好きです。島根でも魚が美味しかった。でも納豆と梅干しはダメですね(笑)今はコロナでダメだけど、早く六甲の仲間たちとも色々食事とか飲みにいきたいです」

 ロッカールームでは大粒の涙を流していたズキも、帰りの車中では既に気持ちは来季に向いていた。

「次のシーズンはキャッチングなど磨いて頑張りたい。もっともと日本語勉強して、日本のラグビースタイルに順応して、六甲の仲間とコミュニケーションを取って強いチームにしていきたいです」。

 南アフリカのナショナルアンセムは5つの言語で紡がれている。その中のズールー語もズキは話す。

 遠く喜望峰の国からやってきた青年との巡り逢いに感謝したい。

 日本一への団結と約束を固める

 ズキル・ヌーベと六甲クラブに

 神の祝福があらんことを。

 

 

 

 


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