親里の風に吹かれて
勝ちはしたが、決して内容は良くなかった千里馬戦。
全くいいところがなく惨敗した関学戦。
近畿リーグ第2戦は、六甲の『戦う姿勢』を問われる試合であった。
風上からのキックオフ。SO前田がセオリー通りにキックで敵陣に入り込む。3分だ。22メートル付近ラインアウトからモールを組む。崩れかけたがFL福島勇が強引に前進して先制のトライをゴールにねじ込んだ。続く9分、14分、17分と、モールから立て続けにトライを重ねて、試合の主導権を握った。
「いつも立ち上がりが悪いが、今日は初めからよかったね。トライをとった後のリスタートもほぼ完ぺきやった」(北迫コーチ)
SO前田がしっかりとキックでFWを敵陣へと送り込み、チームにリズムを与えたのが大きかった。反撃を試みる奈良をがっちりと受け止める防御。22分にまたもモールから5つ目のトライを奪うと、SH谷はボールを散らし始める。
この日先発WTBに起用された市橋。北野高→京大→京大大学院と、おそらく六甲史上最高の頭脳を持つ院生ラガー。27分にはスピードよく切り込んで相手DFをかわし公式戦初トライ。続く32分には、ラックからSH谷→LO志磨と渡ったボールをしっかりフォローして右隅に飛び込む連続トライをあげた。練習試合などで地道にアピールを続けてつかんだ先発の座。
「攻守に素晴らしい働きでした。トライもそうですが、後半、相手の攻撃の流れを止めるタックルも素晴らしかった。こうした若手が活躍することはチームにとって大変プラスになります」
抜擢した谷主将も、新たな若き力を頼もしく感じていた。
前半だけで9トライ7ゴールの55点。奈良ムースもゴール前でSHが素晴らしい切り替えしで1トライを返した。
「反則が多いからトライを奪われる。これを後半の修正点にあげました」(谷主将)
「まだ甘い箇所がみられるのでもっと危機感をもってプレーしてほしい。あの時、こうすればよかったという前に、そうならないためにどうすればいいかを選手はもっと考えてほしい」(北迫コーチ)
風下に回った後半。さらに強くなった秋風を利用して奈良ムースは六甲陣に攻め込んできた。六甲には我慢の時間が続いたが、WTB三木がターンオーバーから個人技でデフェンスを翻弄し、大きく陣地を挽回。ゴール前のラックから最後は少しダイエット効果がみられる?PR永田が巨体ごと相手ゴールになだれ込んだ。
関学戦の惨敗を受け、全員が危機感を持って臨んだこの一戦。入替メンバーも躍動する。
SH瀧村は替わった直後のプレーで相手DFを中央から切り裂き50メートルを走り切る。19歳二宮も、SO前田のキックパスをしっかり受け止めてトライをあげる。先発のFB鳥原は地味ながらも最後尾からBKラインをまとめて、ポジションが変わった後半には、ピンチの時に絶妙なインターセプトで80メートルを走り抜けてトライを決めた。
地元奈良出身のLO大内・志磨も躍動。安定したプレーでトライ量産を支えた。特に39歳になった「永遠の奈良県健康優良児」大内はフル出場のタフネスぶり。終盤には№8に入り若手との連携に力を注いだ。
風の影響もあってコンバージョンはやや不調だったが、16トライを奪って94点での勝利。
「相手に敬意をもって最後まで力を緩めることなく、アタック・デフェンスともに“攻めの姿勢”を見せることができたのは収穫」
と北迫コーチもまずまずの合格点を与える。
WTB市橋は後半にもトライをあげ、この日のMOMに輝いた。チームに勢いを与えるばかりでなく、サポートや、ケガ中の選手たちにも「オレも早く試合に出たい」と思わせる活躍だった。
FW陣の中ではFLの福島勇をあげたい。この日はラインアウトのこぼれ球にも鋭く反応。自分から仕掛けてどんどん前に出るプレーが光った。ピッチ外から見守ったアニキ・福島清は
「まだまだ当たりが高い。フィジカルの強い相手とやれば必ずボールに絡まれるますよ」
と、厳しくも弟の活躍に目を細めていた。
公式戦3連戦、最高の形でスタートを切った。
「勢いだけでなく、いい流れを作っていく安定感が必要と感じました。次の芦屋戦がポイントとなると思うので、個々が爆発してほしい」(谷主将)
「選手はもっと予測をしたプレーをしてほしい。試合中に意識していけばアタック・デフェンスともに前向きなコミュニケーションが取れる」(北迫コーチ)
どれだけ走れば、勝利につながるのか
どれだけ体を張れば、仲間と喜びあえるのか
どれだけ情熱を燃やせば、日本一を掴み取れるのかー。
友よ、その答えは 風に舞っている。
六甲ファイティングブル。
今はただ走り抜けるのだー。
(三宮清純)